「人間というもの」司馬遼太郎 より

十年くらい前に買った本を読み直す。いまなお訴えかけるものがあるのはなぜだろう。

物事は両面からみる。それでは平凡な答えが出るにすぎず、知恵は湧いてこない。いまひとつ、とんでもない角度----つまり天の一角から見おろすか、虚空の一点を設定してそこから見おろすか、どちらかしてみれば問題はずいぶんかわってくる。
「夏草の賦 上」

思想というものは、本来、大虚構であることをわれわれは知るべきである。思想は思想全体として存在し、思想自体にして高度の論理的結晶化を遂げるところに思想の栄光があり、現実とはなんのかかわりもなく、現実とはかかわりがないというところに繰り返していう思想の栄光がある。
「歴史の中の日本」